絵画部の会場批評会の様子
第93回春陽展の入選者会場批評会は、批評希望者が212名。200名を超える多くの参加者が集まりました。今回批評を行った春陽会会員の講師は約40名。それぞれの担当部屋に3、4人分づつ分かれ、ひとり一人丁寧に批評を行いました。出品者からも積極的に質問、発言などがあり、会場は賑わい熱気に溢れておりました。この会場批評会は2時間という限られた時間ではありますが、春陽会の発展に大きく寄与する重要な役割を果たす場でもあります。出品者にとっては会員の講師を通じて春陽会の在り様や春陽会が大切にしている精神性などをダイレクトに実感できる貴重な機会になっているのではないでしょうか。価値観の多様化など大きな時代の変化の時を迎えた今、講師を務める我々も出品者ひとり一人の感性や精神と真摯に向き合うことで、今後の批評会をさらに実りあるものにしてゆきたいと思っております。
春陽会研究会本部(絵画部)事務担当 岸 鹿津代
版画部の会場批評会の様子
4月16日午後1時より3階版画部展示室にて第93回春陽展会場批評会を行いました。研究生、講師、研究会担当総勢15名が各担当チームに分かれ作品の前で講評、技術指導にあたりました。毎回出席している方々の中には都度何かを感じ取られ大きく飛躍された方も見受けられ研究会の役割の重要性を改めて感じます。今年は42名の参加者がありました。
版画部では東京、中部、関西、北海道の各研究会に加えて瀬戸内でも絵画部・版画部の合同研究会として活発に活動を行っています。
組織改革後の新東京研究会も着々と活動の場を広げ、木版、銅版等の実演、レクチャーはもとより、会員所蔵の名画コレクションを前にしての講演会、研究会展開催、会場批評会等、春陽会ならではの充実した内容となっています。関西、中部他遠方からの参加者も増え研究会活動の成果が上がってきたことを実感しております。
近年、現代版画の多様化に伴い公募作品の中にはジクレー、デジタル等の印刷をベースとした作品が出品されてくる様になりました。春陽会版画部としては先達から受け継いだ伝統と精神「鍛錬された技術によって初めて現れる詩情豊かな都会的美意識、モダンで洗練された、きめの細かい絵画としての版画、流行に迎合することなく自分の本質を見極めた真実の個性的表現、根底にあるのは自然に対する敬虔な態度と詩的な感情、知的な造形、技術の尊重」を踏まえ再確認しながら審査を行う必要性を感じています。デジタルメディア化、複製化する作品を前に、作家が版を介在しない表現方法をとる必要性の是非、版画制作への明確な定義と姿勢、イメージと表現の在り方等が見定められなければなりません。木板、銅板、和紙等の素材効果と向き合う内面的描画である浮世絵を含む伝統版画。「彫る、削る」の版を介在させて紙に刷るという制約の中での地道な作業を通して作られる重厚でふくらみのある創作版画。春陽会は新しい潮流を受けつつも現代美術の動向を見極め、会の伝統、理念には誇りをもって次世代に繋いでいく努力をしなければならないと思っています。
春陽会研究会本部(版画部)主任 大久保 澄子