ギャラリー・コンサート「絵と音楽のコラボ」
昨年に引き続き、第92回展もチャリティーイベントの一環として「絵と音楽のコラボ」と題したギャラリー・コンサートが、4月26日日曜日14時より春陽展会場2室にて、マリンバ奏者の亀井博子氏を招き開催された。用意した座席はすぐに埋まり、立ち見も合わせると聴衆は120名を超えた。
司会の呼びかけに応じ、背中に春陽展の文字と蜂を描いたプレートをつけて登場した亀井氏、すぐさまマリンバに向かい演奏した「熊蜂の飛行」で会場の空気を一気に変え和やかな雰囲気で幕を開けた。2曲目にはプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」より「ムゼッタのワルツ」を演奏。“私が街を歩けば…”と元恋人を誘惑する甘いメロディーが、歌声のように響いた。
続いて春陽展にちなんだ「春のうたメドレー」から「桜の幻影」へ。マリンバの音色が次々と表情を変え、聴衆を暖かい季節へと誘った。現代曲「リトミック カプリス」では、打鍵の位置やマレットの持ち方などで奏法にスパイスを加え、まるで抽象画を思わせる多様な音色を紡ぎ出し、絵画とのコラボレーションを感じさせた。低音は床に、高温は天井に跳ね返り、丸く柔らかな音は優しい色へ、強く硬い音は対比する色へと変化し、聴く人の身体を通り抜けて会場の絵画に浸透してゆくかのようだった。
奏者自身の作曲による「フルーツミュージアム」では、チャーミングな一面を覗かせた。手作りのイチゴの帽子をかぶり、軽快なリズムで果物の色や形、味までも連想させ楽しませた。
最後に「アナと雪の女王」「ふるさと」「花は咲く」3曲を演奏。聴き馴染みのあるメロディーがマリンバの音に代わると、絵画の情景から鳴り響くかのように混ざり合い、多くの感動を呼んだ。
アンコールに応えて、マリンバで弾くのは初めての試みというショパンの「エチュードop.10-4」を披露。一見小柄で可愛いらしく温和な印象の亀井氏であったが、3m近い楽器と共に繰り広げた力強く同時に情緒豊かな表現は、絵画の織り成す色彩や造形の前で聴衆を魅了し、あっという間に1時間に及ぶコンサートが終了した。
(レポート:西野雅子)