春陽展は日本美術史に多くの足跡を残し、新たな画家・版画家を輩出している公募展です。

第92回春陽展【アートツアー】

 

第92回春陽展アートツアー(国立新美術館)

 

 92回展アートツアーは、絵画部・版画部から2名ずつの講師が2つの絵画・版画合同チームを作り、進行係を加えた体制をとって準備しました。当日は60名近い方が参加くださり二組に分散いただいて、それぞれ3Fと2Fからスタートすることになりました。
 私は清水美三子氏とのチームで、版画部から始めることになりました。清水氏による作家の創作姿勢や作品の内容・版画技法についての解説は、大変明解にして熱っぽく話され、参加者は熱心に聞き入っていました。版画部受賞作についても、受賞となった優れた点や動機についても明らかにして伝え、皆さんとても興味深い様子でした。私も時おりモチーフとテーマとの関係などにふれつつ、作品の見どころなどについて話しました。
 絵画部では、春陽会の展示方法として、となり合った作品が互いに引き立て合いながらも緊張感をともない、さらに異なる技法・絵画理念や追求の方向なども考慮した展示構成が工夫されていることを説明し、同一壁面にあるいろいろな作家の作品の魅力をくらべながら深く味わっていただき、作家それぞれの個性と春陽会の芸術理念がうかがい知れるように解説してみました。
若い作家たちの新しい感覚の広がりにも注意を向けながら会場を巡ります。しばしば清水氏の的確な助言もあり、絵画芸術の豊かな味わいを感じていただけたものと思います。最後に春陽会賞・奨励賞の展示してある部屋に移動し、現代の作家の問題意識や、描写することと感性の輝きなどについて解説をしたところで時間となりました。
 全体として今に息づく個性的な作家と春陽会の掲げている精神や造形表現の多様性を感じとっていただけたものと確信しております。移動時間や多数のふれるべき作品の解説に力が入って、参加者の素直な感想を引き出すことが少し不足したかなという反省も残りますが、最後まで多くの方々に参加していただけたことに感謝したいと思います。

(絵画部 佐藤 勤)

 

 第92回春陽展アートツアーは、絵画、版画の会員が、A班(金谷ちぐさ氏、林和一)、B班(佐藤勤氏清水美三子氏)に分かれて参加者と共に会場を巡った。

 会員が制作者として直接作品を解説すれば、画面はより一層精彩を帯びてくる。鑑賞者は魅惑的な作品群の前で「何がどう描かれているか」など、基本的な要点を考慮に入れた説明があれば、具体的で感動的な世界が見えてくるのではないだろうか。
 ツアーは、作品の見方や共通する認識などの鑑賞のポイントを、参加者と作品の垣根を取り払った解説で、参加者すべての方がツアーを楽しまれるように心掛けた。
 参加者の質問や感想からは、絵画では制作意図や題材について、版画では技法のプロセスやデジタル画面との整合性などがあったが、少し観点を変えた説明で、作品への歩み寄りや親しみが得られていた。また、春陽会の世代を越えた作家の結びつきや、新人作家の多用な表現は参加者を強く引きつけていた。
 短い時間ではあったが、質の高い有意義な時間が保たれ、来年のアートツアーにも期待する声が多く聞かれた。

(版画部 林和一)

 

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